江川 到(えがわ いたる)


本当に美味しいキウイを食べてもらいたい。

やるからには手は抜かない、時間をかけて追熟したキウイの味は最高だよ!。


 実家は代々みかん農家。農家の長男に生まれて、あたりまえのように農家を継いでここまできたって感じかな。その時期、その時期にやらなくてはいけないことがあるので、追われているって感じがあるけど、根がさぼりやだからちょうどいいのかもしれないな。最初からそうだったわけじゃないけど、今は手を抜かないようにして、とにかく一生懸命やるしかないからね。

自分が本格的に家の農業を始めたときは、みかんの売値がもうこれ以上悪くはならないだろうというくらい、どん底だった。どうしたらいいか考えて、キウイ栽培を始めた。キウイはそんなに農薬をかけなくてもよく育つからね。でも始めて数年後にかいよう病がでて、「もうダメかな~」と思った時期もあったけど、なんとか乗り切ったよ。今では収入でいうと、キウイが一番。その後が玉ねぎとみかん、そして梅かな。

有機キウイの作業は両親と一緒にやってるけど、高齢の親が受粉が大変だっていうね。有機栽培だとピンク色の石松子(せきしょうし-花粉増量剤/化学着色料)が使えなくて、替わりに炭を使うんだ。雌花はいっぺんに咲くわけじゃないから、何回も畑を回ってまだ受粉していない雌花を探すんだけど、炭だとわかりにくいんだよね~。やっぱりいいものを作るには手間はかかるけど、根気よくやっていくしかないないよね。

キウイは、剪定の微妙な加減で味にも影響がでると思うんだ。剪定の仕方によっては日が入るようにもできるし、葉を多く残すと日影が多くなる。見た目だけを気にすると、なるべく日焼けがないように葉も多くなる。でもある程度日があたらないと玉伸びしないし、味もよくならない。自分は多少日焼けしても、最高な味になるような剪定を心掛けているんだ。この微妙な加減は、やっぱり経験を積まないとなかなか習得が難しいかな。


ちゃんと追熟をしたキウイは本当に美味しいよ。みんなは追熟期間は3日だって言うけど、自分は4日はかけるな~。本当はもっとしっかり追熟して食べ頃を出したいけど、出荷から家庭に届く時間を考えると、多少硬いまま出さなきゃいけない。一番の食べ頃を消費者に届けるのは難しいよね。追熟が終わった後に、ぷ~んと甘い匂いがするくらいだと、最高に美味しいよ。自分は消費者に食べてもらって「美味しい!」って言ってもらったときに、農業をやっていてよかったなと思うんだ。

 

今、ニュージーランドのキウイを扱っているゼスプリが、日本でキウイの栽培を始めているでしょ。ゼスプリの日本進出はやっぱり脅威だよ。今までニュージーランド産のキウイは国産と収穫時期がずれていたから競合しなかったんだけど、国内で生産するとなると話は変わってくるからね。ま!でも、自分にできるのはいいものを作るってことしかないし、しっかり追熟をかけて、他の産地に負けないようにするしかないね。美味しくしようと思えば、まだまだやれることはあると思うよ。

自分は生まれ育ったこの沼代(部落名)が好きだし、なんとか次の世代に引き継いでいきたいと思ってる。この沼代にも昔はもっと専業農家がいたけど、今はうち一軒になっちゃったね。でも農業が好きな若いやつがいて、土地を借りて一生懸命やってるよ。「農業収入だけで食べていければ仕事を辞めたい」っていって、頑張ってるから希望は持てるかな。自分のできることはしっかりやって、若者を応援していくよ。