鳥居啓宣(とりい ひろのぶ)


 植物・動物・金魚のことから世界情勢まで、その知識の広さと深さは必聞の価値あり 

生き物と共存の農業を目指す


農薬や肥料について思うのだけど、植物にとっての農薬は人にとっての薬、植物にとっての肥料は人にとっての食べ物、その中でも化学肥料はサプリメントのようなものなんじゃないかってね。薬やサプリメントをやたら飲んでそれに頼っていると、逆に本来の力が弱ってしまうだろ。それと同じで、農薬や化学肥料も使わなくて済むならそのほうが、キウイの本来の力が引き出されて強くなるんじゃないかな。

例えば、ジョイファームでキウイの栽培に農薬を使わないようにし始めたらカメムシが大量発生して大不作になった年があった。生産者はみんな不安になったよ。でも、せっかく農薬を使わない栽培をしようと頑張ってきたのに、ここで使ってしまったらこれまで積み上げてきた意味がなくなってしまう。だから、もう少し農薬を使わずに辛抱してみようとジョイファームのみんなで決めたんだ。そうして農薬に頼らない栽培を続けていたら、自然とキウイの樹そのものが強くなったのか、カメムシの天敵となる昆虫が来るようになったのか、カメムシの被害はひどくならず収まっていったんだ。


肥料についても、ジョイファームで(果樹に)使っているのは有機質100%のものだけ。化学肥料は使っていないんだ。それに、有機栽培を長年続けていると肥料をたくさん入れなくても樹が育つようになる。畑の土には微生物がたくさんいるし、ミミズが土を耕してくれている。だから、土がふかふかやわらか。土がやわらかいってことは、樹が土の栄養思いっきり吸収しやすくなるってことだね。

 

そして、除草剤を使っていないので、やわらかな下草が茂っている。生き物の住処になるから、益虫もいる。農薬、化学肥料、除草剤に頼らない栽培をすることで、自然に元々ある土の力、樹の力、益虫の力をめいいっぱい引き出してるんだよ。そうして病害虫に強いキウイフルーツを育てているんだ。

農業に限らず、生きるっていうことは、今同じ時間に生きている生き物達と共に時間を過ごすということなんだよ。そして、100年後、200年後の時代に、今の時代のお蔭で良い環境が残っていると言われるのか、今の時代のせいで環境が壊されたと言われるのか。考えて欲しい。