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三世代力をあわせて取り組む農業


小田原で一番東に位置する「下中地区」。東は二宮町、北は中井町に接しており、のどかな風景が広がる地域です。

粘土質で栄養豊富な土が農作物の成長に向いており、かながわブランドの「下中玉ねぎ」は旬になると連日メディアでも取り上げられ、ご存知の方も多いはずです。

 

現在では畜牛・乳牛農家が減少してしまいましたが、昔は市内でも畜産が盛んな地域であった為、ベテランの生産者曰く、「牛がいたから堆肥には困らなかった。タダだから贅沢に使えて、何の作物を作っても下中は良く育つ!って言われていたね。」とのこと。

 

「夏場は自宅で直売をしてるんだ。天気に関係なく、毎日やってるよ」と話すのは下中地区の小澤雅典さん。

ジョイファーム小田原にはみかん・玉ねぎを出荷していて、2019年のブログ記事「新玉ねぎのシーズン到来!」にも登場しています。

 

「いつも交流企画で積極的に話をしていますよね?その秘訣は…」と聞いたところ…

「本当に!?自分はかなり口下手だと思う…(笑)」と意外な言葉が返ってきました。

毎年行なっているみかんの収穫交流体験「柑謝祭(かんしゃさい)」や玉ねぎの収穫交流体験「オニオン祭」、NPO法人小田原食とみどりの「果樹の学校」の体験コース受け入れなど、多くの交流体験に生産者側として参加してくれています。

小澤果樹園ぶどう
見事に粒が揃ったぶどう

両親の背中が忘れられなかった

両親がこの地でぶどう、みかん、玉ねぎ(野菜)の農家として働いていて、小さい頃からその手伝いをはじめて。だから、特別に「農家になりたい!」と意識したことはなかったんです。

でも、いずれ継ぐことになるんだろうと思いながら農業高校・大学と卒業して、そのまま農家になりました。実家から学校に通って、本当にこの地を離れたことがないんです。

父は無口な働き者で、黙々と作業をするような人。今も父・母と一緒に畑へ行っていますよ。

 

僕が小学生の頃、大きな台風がやってきてぶどう棚が潰れてしまったことがありました。収穫期の潰れたぶどうの後片付けをしている両親の背中は今でも脳裏に焼きついています。

今では基礎をしっかり作り直して、潰れる心配もなくなりました。

棚は自分で作っていますよ。

 

ぶどうはどの作物より一番手がかかるけれど、「摘粒」と呼ばれる作業が好きですね。何もしない状態だと1房に130粒ほど実ができてしまいます。これを、十分な大きさ、形に整えるために、専用のはさみを使って40粒ほどに間引くんです。6月は朝から1週間、ず~っとその作業をします。大変な作業ですが、自分の想像した通りの形に育つと嬉しいですね。正直なところ、収穫より楽しみかな(笑)

 

耕作面積としてはみかんが一番広くて6反ほど、小田原で栽培が盛んな大津・青島みかんを栽培しています。9月以降はいよいよみかんのシーズンで忙しくなってきますね。

次いでぶどうが5反かな。品種はピオーネ、シャインマスカット、ゴルビーなど10種類ほどを作っています。

玉ねぎは下中では栽培が盛んな早生の七宝。

それと、僕の代から栽培をはじめた梨。

大学に行った時に友達の家が梨農家だったんです。ぶどうとなしは収穫期が同じだから直売をしたときに一緒に出したらいいな~って思ったのがきっかけです。品種は幸水と豊水を栽培していますね。市内では梨というと酒匂川に近い「鬼柳」周辺で栽培されているイメージがあるかもしれませんが、下中でも結構栽培しているんですよ。

 

ジョイファーム小田原には自分の代から加入しました。下中の先輩生産者(支部長)、江川到さんから話を聞いて、苦労はするけれど環境に優しい栽培とか、消費者との関わり方とか、共感できたので加入したんです。

変り行く環境

今は昔に比べて機械や技術は変ってきていると思います。若い頃は頻繁に講習会に参加していましたが、基礎は分かっているので、新しい情報だけを知りたい時は本やインターネットで調べることもあります。

あと、最近は農家もyoutubeの動画を出しているので観ますよ。「剪定のしかた」とか、たくさん調べると出てきますね。

柑謝祭での交流(甘いみかんの見分け方を伝授)
柑謝祭での交流(甘いみかんの見分け方を伝授)

最近息子が農業を継いだんです。農学部で主に園芸を学んで卒業したばかり。

今では家族5人で力をあわせて農業をしています。僕が継いだ時点では作りたいものの目標がありましたが、息子はまだないみたいですね。やっぱり何か挑戦したい作物があると、達成感が生まれるし、いいものを作るために勉強をするじゃないですか。

今のところ僕の代ではこれ以上新しい品目を増やすつもりはなくて、今あるものでより良い品質を目指していきたいので、何か息子にもそういったものができるといいですね。

 

最近下中地域では我々世代の息子達が後を継いだって話を結構聞きます。後継者不足って市内でも大きな問題になっていますが、ここに住んでる人はみんなほんわかしてて、のどかで暮らしやすいから自然とここの土地で農業をしたいって思うのかな?

 

最近はコロナウイルスのこともあってなかなか出かけられなくなってしまいましたね。

僕も趣味のドライブに行くことができなくなってしまいました。

この近所でも伝統的な祭りや花火大会など催しは自粛しています。

 

人と人が関わる直売はお客さんが減るだろうなと覚悟していましたが、店頭に来られない分、宅配の依頼が増えましたね。お客さんが送った先の人が気に入って注文をくれたりして、結果的には減りませんでしたね。

 

玉ねぎと雅典さん(※2017年撮影)
玉ねぎと雅典さん(※2017年撮影)

下中では玉ねぎを栽培するだけでなく、オーナー園もやっています。この地域の荒廃農地を玉ねぎ畑として活用して、1区画200本の玉ねぎの苗を植えて、手入れから収穫まではオーナーがする企画ですけど、20年前からやっているんですよ。

 

七宝(※玉ねぎの品種名)って本当においしいですよね。はじめて食べる人はまず生でスライスして食べて欲しいです。

それから、丸ごと電子レンジでチン!加熱をすることで甘みが増すんです。「お酒」にもよく合いますよ(笑)是非、お試し下さい。

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小澤果樹園 (開催時期:8月上旬~9月20日頃)

https://kanasan-no-hatake.jp/store/morning_fair/map_06/map07_12.html

 

*かながわブランド・かながわ産品の情報発信サイト「かなさんの畑」にて詳細公開中です。